失業保険をもらいながらバイトは「いくらまで」働けるか

最終更新:2026年8月9日|執筆:瀬尾 健一

失業保険の受給中でもバイトはできます。
ただし稼ぎ方によっては、働いてもバイト代と手当の合計が1円も増えない金額帯に入ります。
月給30万円だった35歳の人なら、1日3,122円から9,429円までがその帯です。
この帯の幅は、偶然ではなく基本手当日額とぴったり同じになります。

このページの早見表(月給別の「働き損ゾーン」の境目)は、出典を明記していただければ引用いただけます(許諾申請は不要です)。
出典:マネー計算ラボ(https://money.lifeup-lab.com/shitsugyo/baito/)
数値は税率・保険料率・給付額の改定で変わるため、各ページに記載している確認日もあわせてご記載ください。
詳しくは運営者情報・引用についてをご覧ください。
この日に受け取れる手当
賃金日額
基本手当日額(減額前)
判定
バイト代+手当の合計
手当が1円も減らない上限
その日の手当がゼロになる額
働いても合計が増えない帯

稼いでも合計が増えない「働き損ゾーン」がある

「失業保険をもらいながらバイトはいくらまで?」という問いに対して、多くの記事は「賃金日額の80%まで」と答えます。
これは間違いではありませんが、実際に手元に残る金額を追うと、もっと重要なことが見えます。

月給30万円だった35歳の人(賃金日額10,000円・基本手当日額6,307円)で、1日のバイト代を変えながら計算します。

バイト収入その日の手当合計判定
0円6,307円6,307円全額支給
2,000円6,307円8,307円全額支給
3,122円6,307円9,429円全額支給(ここが上限)
4,000円5,429円9,429円減額支給
6,000円3,429円9,429円減額支給
8,000円1,429円9,429円減額支給
9,429円0円9,429円不支給
10,000円0円10,000円不支給

3,122円から9,429円までの間は、いくら稼いでも合計が9,429円のまま変わりません。

4,000円稼いでも8,000円稼いでも、手元に入る金額は同じです。

つまりこの帯で働くのは、時間を使っただけで収入が1円も増えない状態です。
1日3,122円までに抑えるか、いっそ9,429円を超えて稼ぐか、どちらかにしないと働いた意味がありません。
ただし9,429円を稼ぐには4時間以上働くことが多く、その場合は別のルール(先送り)が適用されます。

減額のしくみ(控除額1,429円と80%ルール)

なぜこうなるのか、計算の中身を見ます。
失業の認定に係る期間中に自己の労働で収入を得た場合、次の3つのどれかになります(雇用保険法第19条)。

判定条件その日の手当
全額支給(収入 − 控除額)+ 基本手当日額 ≦ 賃金日額の80%減らない
減額支給(収入 − 控除額)+ 基本手当日額 > 賃金日額の80%超えた分だけ減る
不支給(収入 − 控除額)≧ 賃金日額の80%0円

ここで出てくる控除額は、毎年8月1日に改定される金額です。

控除額は令和8年8月1日から1,429円です(それまでは1,391円。厚生労働省の報道発表資料に「1,391円 → 1,429円と引き上げられる」と明記されています)。
他のサイトで見かける金額が古い場合があるため、計算するときは年度をご確認ください。

減額支給になったときに減る額は、次の式で決まります。

減額される額 =(収入 − 1,429円)+ 基本手当日額 − 賃金日額×80%

収入が1円増えると、減額される額も1円増えます。
だから手当が1円減り、合計は変わらないのです。

厚生労働省の公式計算例で検証する

この計算が正しいかどうか、厚生労働省が公表している計算例で確かめます。

厚生労働省の資料に載っている例:賃金日額7,000円、基本手当の日額5,201円の人(60歳未満)が、失業の認定に係る期間(28日間)中に2日間内職し、内職により6,000円を得た場合。
→ 認定期間(28日分)の基本手当の支給額は143,284円

同じ条件を、上の式で計算します。

手順計算結果
1日あたりの収入6,000円 ÷ 2日3,000円
控除額を引く3,000円 − 1,429円1,571円
基本手当日額を足す1,571円 + 5,201円6,772円
賃金日額の80%7,000円 × 80%5,600円
超えた分=減額される額6,772円 − 5,600円1,172円
働かなかった26日分5,201円 × 26日135,226円
働いた2日分(5,201円 − 1,172円)× 2日8,058円
合計135,226円 + 8,058円143,284円

厚生労働省の公表額と1円まで一致しました。

このページの計算ツールも同じ式で動いています。

働き損ゾーンの幅は基本手当日額と同じ

ここからは、この制度の性質を式で確認します。

手当が減り始める金額(=全額支給の上限)と、手当がゼロになる金額は、それぞれ次のようになります。

手当が1円も減らない上限賃金日額×80% − 基本手当日額 + 1,429円
手当がゼロになる額賃金日額×80% + 1,429円

この2つの差を計算すると、賃金日額と控除額が打ち消し合い、基本手当日額そのものが残ります。

(賃金日額×80% + 1,429)−(賃金日額×80% − 基本手当日額 + 1,429)= 基本手当日額

つまり働き損ゾーンの幅は、必ず基本手当日額と同じになります。
基本手当日額が6,307円の人なら、6,307円ぶんの帯が「働いても増えない範囲」として存在します。

言い換えると、受け取る手当が大きい人ほど、働き損になる帯も広いということです。
手当が多いから安心、とはならない点に注意してください。

月給別の早見表

退職時35歳・1日4時間未満で働いた場合の、金額の境目です。

退職前の月給賃金日額基本手当日額手当が減らない上限手当がゼロになる額働き損ゾーンの幅
18万円6,000円4,683円1,546円6,229円4,683円
20万円6,667円5,037円1,725円6,762円5,037円
25万円8,333円5,776円2,320円8,096円5,776円
30万円10,000円6,307円3,122円9,429円6,307円
35万円11,667円6,630円4,132円10,762円6,630円
40万円13,333円6,744円5,352円12,096円6,744円
50万円16,667円8,270円6,492円14,762円8,270円

月給が低かった人ほど、手当が減らない上限が低い点に注意してください。
月給18万円だった人は1日1,546円を超えると減額が始まります。
時給1,100円なら1時間半ほどです。

年齢によって基本手当日額の上限が変わるため、金額は年齢でも動きます。
ご自身の数字は上の計算ツールで確認してください。
基本手当日額そのものは失業保険(基本手当)計算シミュレーターでも計算できます。

1日4時間以上なら手当は消えず「先送り」になる

ここまでは1日4時間未満で働いた場合の話です。
1日4時間以上働いた日は「就労」として扱われ、その日の基本手当は支給されません。

ただし重要なのは、その分が消えるわけではないという点です。

4時間未満(減額)4時間以上(先送り)
その日の手当減る、またはゼロ支給されない
所定給付日数1日消化される減らない
受け取れる総額減った分だけ少なくなる受給期間内なら変わらない

月給30万円・35歳・所定給付日数90日の人で比べます。

短時間で中途半端に稼ぐより、まとめて4時間以上働くほうが有利になる場合があるのは、このためです。

ただし「先送り」には期限があります。基本手当を受け取れるのは、原則として離職の日の翌日から1年間(受給期間)です。
この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。
給付日数が長い人(180日・240日など)がバイトを詰め込みすぎると、消化しきれずに期限切れになることがあります。

バイトしていい期間・いけない期間

失業保険の手続きは、期間によって扱いが変わります。

期間バイト理由
求職申込みより前問題なしまだ受給の手続きが始まっていないため
待期期間(7日間)避ける「失業している状態」を確認する期間。働くとその日は待期に算入されず、受給開始が後ろにずれる
給付制限期間(自己都合の場合、原則1ヶ月)申告のうえ可能手当が出ていない期間のため減額は起きない。ただし就職とみなされる働き方は避ける
受給中申告のうえ可能このページで説明した減額・先送りのルールが適用される

とくに注意が必要なのが待期期間の7日間です。
この7日は「失業していること」を確認するための期間なので、働いた日はカウントされず、そのぶん受給開始が遅れます。
7日間だけは何もしないのが確実です。

なお自己都合退職の給付制限は、2025年4月から原則1ヶ月に短縮されています(それ以前は2ヶ月)。
詳しくは失業保険はいつからもらえるかで解説しています。

週20時間・31日を超えると「就職」扱いになる

1日あたりの金額とは別に、働き方そのものが「就職した」と判断される基準があります。

基準内容
週20時間以上雇用保険の加入対象になる働き方。就職とみなされ、基本手当は打ち切りになります
31日以上の雇用見込み同じく雇用保険の加入対象。継続して働く契約は就職扱いになります

この2つは雇用保険の加入条件そのものです。
加入対象になる働き方をしている=失業していない、という判断になります。

したがって受給中にバイトをするなら、週20時間未満かつ31日未満の契約に収めるのが基本です。
単発・短期の仕事が勧められるのはこのためです。

就職扱いになること自体は悪いことではありません。安定した仕事に就いたなら、再就職手当を受け取れる可能性があります。
所定給付日数を3分の1以上残して就職した場合、残日数の60%または70%が一時金として支給されます。
「バイトで手当を削りながら受給を続ける」より、就職して再就職手当を受け取るほうが総額で有利になることは珍しくありません。

バイトを続けるより就職したほうが得か

「早く就職すれば再就職手当がもらえるからお得」という説明をよく見かけます。
これは半分だけ正しいので、数字で確認します。

再就職手当は、所定給付日数を一定以上残して安定した職業に就いた場合に支給されます。

残っている給付日数支給率
所定給付日数の3分の2以上残日数の70%
所定給付日数の3分の1以上残日数の60%
3分の1未満対象外

ここで注意が必要なのは、計算に使う基本手当日額に上限があることです。
令和8年8月1日以後は59歳以下6,745円・60〜64歳5,454円で、これを超える人は上限額で計算されます。

月給30万円・35歳・自己都合(基本手当日額6,307円・所定給付日数90日)で比べます。

選択受け取った手当再就職手当手当の合計全部もらう場合との差
最後まで受給する567,630円567,630円
30日受給して就職(60日残す)189,210円264,894円454,104円−113,526円
45日受給して就職(45日残す)283,815円170,289円454,104円−113,526円
60日受給して就職(30日残す)378,420円113,526円491,946円−75,684円

手当の総額だけを見ると、早く就職するほど少なくなります。

再就職手当は残日数の60〜70%なので、満額には届かないためです。

それでも早く就職したほうが得になるのは、給料が入るからです。
60日残して就職した場合、手当は113,526円少なくなりますが、その60日ぶんの給料が入ります。
月給30万円なら2ヶ月で約60万円。手当の減少分を大きく上回ります。
「再就職手当がもらえるからお得」という説明は、給料を含めて初めて成り立つと理解してください。

この観点から、バイトとの比較を整理します。

選択手当の総額ほかに入るお金
働き損ゾーンで20日バイト最大126,140円減って441,490円バイト代は入るが、手当が同額減るため実質増えない
4時間以上で20日バイト567,630円(減らない)バイト代がそのまま増える
60日残して就職454,104円給料60日分(月30万円なら約60万円)

最も避けるべきは1行目です。
手当が減り、その減った分だけバイト代が相殺されるため、時間を使った結果が実質ゼロになります。

申告しないと3倍返しになる

働いた日と収入は、失業認定申告書に必ず記載します。
金額の多少や、雇用契約の有無は関係ありません。

申告せずに受給した場合は不正受給となり、次の処分を受けることがあります。

返還と納付を合わせて、受け取った額の3倍を求められることから「3倍返し」と呼ばれます。
悪質な場合は詐欺罪として告発されることもあります。

「申告が必要かどうか分からない」というケース——知人の手伝い、単発の内職、報酬が現金手渡し、フリーランスとしての業務——も、収入があれば申告の対象と考えて、判断に迷う場合はハローワークに確認してください。
申告したうえで減額されるのと、申告せずに3倍返しになるのとでは、リスクの大きさが違います。

結局どう働くのが得か

ここまでの内容を、実際の判断に落とすと次のようになります。

状況働き方理由
少しだけ収入を足したい1日「手当が減らない上限」まで(月給30万円なら3,122円)手当が1円も減らず、稼いだ分がそのまま増える
しっかり稼ぎたい1日4時間以上でまとめて働くその日の手当は出ないが給付日数は減らず、受給期間内なら後で受け取れる
最も避けるべき4時間未満で、上限を少し超える程度に稼ぐ働き損ゾーン。稼いでも合計が1円も増えない
就職が決まりそう早く決める給付日数を3分の1以上残せば再就職手当が出る

整理すると、「ちょっとだけ」か「がっつり」のどちらかにするのが原則です。
中間が最も損になる、という珍しい形の制度になっています。

そのうえで、給付日数の残りと受給期間(原則1年)を意識してください。
先送りは無限にできるわけではなく、期限を過ぎれば残った日数は消えます。

よくある質問

Q. 失業保険をもらいながらバイトはいくらまで働ける?
A. 手当が1円も減らないのは「賃金日額の80%相当額 − 基本手当日額 + 控除額1,429円」までです。
月給30万円・35歳の人なら1日3,122円まで。
これを超えると超過分だけ手当が減り、9,429円以上稼ぐとその日は不支給になります。
Q. バイト代が増えれば手取りの合計も増える?
A. 増えない金額帯があります。
減額支給の範囲では、稼いだ分だけ手当が減るため合計は変わりません。
月給30万円・35歳なら1日3,122円〜9,429円がこの帯で、幅は基本手当日額(6,307円)と一致します。
Q. 1日4時間以上働くとどうなる?
A. その日は手当が支給されませんが、所定給付日数は減りません
受給期間(原則、離職の翌日から1年)内であれば後ろにずれて受け取れます。
手当が消えるわけではありません。
Q. 控除額はいくら?
A. 令和8年8月1日から1,429円です(それまでは1,391円)。
1日あたりのバイト収入からこの額を引いた金額で減額を判定します。
控除額は毎年8月1日に改定されます。
Q. 待期期間中にバイトをしてもいい?
A. 避けてください。
求職申込み後の7日間は「失業している状態」を確認する期間のため、働いた日は待期に算入されず、受給開始が遅れます
給付制限期間中は、申告のうえであれば働けます。
Q. 申告しないとどうなる?
A. 不正受給となり、支給停止・返還・不正受給額の2倍の納付を命じられることがあります(合わせて3倍)。
悪質な場合は詐欺罪として告発されることもあります。
金額にかかわらず必ず申告してください。
Q. 交通費も収入に含める?
A. 実費として支給される交通費は、通常は収入に含めません。
ただし扱いが分かれる場合があるため、失業認定申告書に記入する際にハローワークで確認してください。
Q. 給付制限期間中に働いた分は減額される?
A. その期間はもともと手当が出ていないため、減額は起きません。
ただし申告は必要で、週20時間以上・31日以上の契約になると就職とみなされ、受給資格そのものに影響します。

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この記事の前提(2026年8月9日確認):控除額1,429円は、厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(令和8年7月31日報道発表)の別添資料に記載された令和8年8月1日以後の額です。
基本手当日額・賃金日額の上限下限は同資料および令和8年8月1日適用のリーフレットにもとづきます。
本ページの計算は、賃金日額を「月給×6÷180」として算出した概算です。
実際の賃金日額は退職前6ヶ月に支払われた賃金の合計をもとにハローワークが決定します。
「1日4時間以上は就労、4時間未満は内職・手伝い」という区分および、就労日の基本手当が先送りになる取り扱いは、ハローワークの運用にもとづくものです。
実際の判断は管轄のハローワークによります。
減額の判定・不正受給の処分・再就職手当の可否など、個別の取り扱いは必ず管轄のハローワークにご確認ください。
本ページは目安を示すものであり、支給の可否や金額を保証するものではありません。
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(令和8年7月31日)同 別添「雇用保険の基本手当日額の変更」(PDF)同「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」ハローワークインターネットサービス「基本手当について」

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